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執筆者の写真清風会 公認会計士

第47期第4回月例会報告「いま改めて考える、『公認会計士監査』とは」


【講師】八田進二先生(青山学院大学名誉教授/大原大学院大学教授)


第47期第4回目の月例会は、会計監査研究の第一人者である八田進二先生にご登壇いただきました。

監査の機能というと、当たり前のように指導的機能と批判的機能が頭に浮かびますが、「指導的機能と言う概念があるのは日本だけである」というお話から始まりました。

お話の一部をご紹介します。

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第三者による保証業務という、新しい制度を日本に導入するにあたって、先人たちが苦心して導き出した概念であったものの、その後、「指導的機能」が歪曲して理解され、経済事件へと発展してしまった。

公認会計士が行う監査は、財務報告そのものの保証ではなく、その作成に至るまでのプロセスであるべきではないか。

つまり、公認会計士が行うものは、「会計監査」ではなく、「企業監査」として理解される。

日本人は、悪事が起きた際に、「まさか、あの人に限って…」と感じることが多い。悪事は、悪い人が行うのではなく、人間が弱いから悪事に嵌まってしまうと考えるべきであろう。これは、「性弱説」と言えるかもしれない。

アメリカで、エンロン、ワールドコム、アーサー・アンダーセンの一連の事件が起きた際、日本の会計士たちは、「あれはアメリカのことで、日本では起きるはずがない」という人が大半であった。しかし、その後、直近に至るまで、大企業による会計不正が行われている。

一方、アメリカでは、その後、大きな事件となっていないのは、経済事件の厳罰化が進み、誘因が低くなっていることが功を奏しているのだろう。

日本では、経済事件が発生するにつれ、それに対応するような制度改革が進んでいるが、従来はアメリカ型の会計・監査制度を導入していたのに、コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップ・コードと言ったヨーロッパ型の制度も導入し、現状は、節操がないようにも見える。

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監査役制度というのは日本独自のものであるが、トップマネジメントを監督する機能として、本来通りに発揮されれば、ものすごく素晴らしい制度である。

しかしながら、日本における監査役は、取締役になれなかった人が就く職という意識が依然としてあり、本来の役割を果たせる能力がある人が就任していないのが問題である。

本来、会計監査人、監査役、内部監査部門といった監査機能を担う人材は、リスペクトされるべきであろう。

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「企業監査」を行うには、監査人には会計及び監査以外の資質が求められることになる。ビジネス感覚に長け、経営者と対等以上に意見交換ができ、劇的に変革する企業環境などの情報を敏感にキャッチする感性が必要となってくる。

「企業監査」は、成熟したプロフェッションが担うべき社会的義務である。

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「監査論」を大学では学ばずに、受験時代の専門学校でしか触れておらず、実務の場面では目の前の手続きに囚われがちであった私にとって、日本における監査制度の成り立ち、そして現在・未来への変化の過程、また諸外国との違いなど、大局的にお話していただき、目からうろこが落ちるとはこのことかという気持ちでお伺いしていました。


大変お忙しい中、清風会の面々のために貴重なお時間を頂戴し、八田先生に大変感謝しております。

この後の懇親会も、雪予報ではありましたが、八田先生を囲んで盛況に開催いたしました。


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